189人が本棚に入れています
本棚に追加
昼休み。
急いで待ち合わせの場所へと行くと既に真一の姿があり、手には英語の教科書があった。
「勉強していたの?」
「いや、優と久遠にやらせるプリントを作ろうと思ってな」
教科書を閉じ、弁当を取り食べ始める。
「いつもプリントとか作ってあげてるの?」
「あぁ。じゃねぇとあいつ等直ぐに怠けるからな」
そうだとしても友達の為にそこまでするなんて。
驚く俺に、真一は大したことじゃないというような口ぶりで毎年の事だという。
「はぁ、凄いなぁ。俺にはまねできないよ」
さすが学年トップを守り続ける事だけはある。
感心しつつお弁当を食べ終えた俺は水筒の中の暖かいお茶をコップに注ぐ。
「本当は俺が付きっ切りでお前の勉強を見たかったんだが、俺はあいつ等二人で手一杯だからな」
他の男に任せるのは本当は嫌だったんだからなと腰にぎゅっと真一の腕が回り、俺の胸へと顔を埋める。
「俺まで心配かけちゃってごめんね」
真一の頭を抱きかかえて額にキスを落とせば、
「そこじゃなくて唇によこせ」
と真一が唇を突き出す。
「えっ」
じっと真一の唇へと視線を向ければ、意識してしまって顔が熱くなる。
ドキドキと心臓がうるさいし手は震えてしまう。緊張しながら真一の唇へちょっとだけ触れて離れる。
「樹……」
真一の眉間にしわがよる。
うう、あんなのキスじゃないって言いたいんだろ? でも俺にとってはあれがいっぱいいっぱいだ。
最初のコメントを投稿しよう!