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澤木君が図書委員になってから何度目かの当番が回ってきた時だ。
その日は返却された本が多く、一人だけカウンターに残して本の片づけをしていた。
最後の一冊は脚立を使って片付けなければいけない場所で、誰にも手を借りないで自分で何とかしようなんて思ったのがいけなかった。
脚立を使用して高い位置にある本を取ったり片付ける時は、もしものために必ず二人一組でやることになっている。
いつもならきちんと守っていたけれど、まぁ、本も一冊だし大丈夫だろうと俺は一人で脚立の上へと昇ったのだが、それを澤木君に見つかってしまった。
脚立をおさえてくれたのだが、正直、下へ降りたくなかったよ。だって、怖い顔して俺を見上げているんだもの。
「先輩、俺が図書委員に入る時、なんて教えてくれたんでしたっけ? 自分から言っておいて守れないとか、俺、そういうの嫌いですから」
俺がそう教えたというのに守らないんだから、そりゃ怒るのも無理はない。
脚立からゆっくりと降り、脚立をおさえていてくれてありがとうを礼を言い、決まりごとを破ってごめんねと謝る。
そんな俺を冷めた目で見つめ、ぼそっと何かを呟いた。
聞き間違いでなかったら、
「ムカつくんだよ、あんた」
と澤木君は言っていた。
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