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あの言葉が俺を落ち込ませる。
もう図書委員をやめようか。そうすれば澤木君もムカつくこともないだろうし、俺もビクつく日々を送らないですむ。
「加勢、どうしたんだ?」
生徒会室から戻ってきた小崎が、ふさぎ込む俺に声を掛ける。
「あ、うん、ちょっと眠くてね」
そう言って誤魔化す。だって、澤木君のことで悩んでいるなんて言えないから。
しかも、そんな時に限って、
「真一、役に立つだろ?」
今、一番聞きたくない名前を口にする。
それも弟を自慢する兄のように声が弾む。一瞬、言葉に詰まりそうになった。
「っ、う、うん。仕事を覚えるのも早いし、本のことも詳しいし……」
図書委員としての彼は凄いと思う。それだけに俺の気持ちはどんどん落ち込んでいく。
俺の様子がおかしいと思ったのだろう。小崎が俺を見ながら心配するような表情を浮かべている。
「俺さ、澤木君に嫌われちゃったみたい」
そう言うと無理やり笑う。でないと泣きそうになるから。
「え、真一が?」
そんなことをするような奴じゃないと言いたげな顔をする小崎に、俺は一気に血が上る。
「お前は嫌われてないからッ」
声を荒げる俺に、小崎が落ち着けと肩を叩く。
「あ……、違う、そういう意味じゃなくてな」
勘違いしているだろうと頭をかき。
「えっとな、真一は加勢みたいなタイプは嫌いじゃないはずなんだがな」
なんて、耳を疑うようなことを言う。
「嘘だ」
じゃぁなんで俺を冷たい目で見るの?
俺は委員がある度に澤木君の顔色を窺うようになり、できるだけ視線に入らないようにしていた。
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