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そうやって、大好きな場所で気を使って過ごしているのだ。
「俺は、俺はっ!」
もう限界だ。
ぽろぽろと涙が零れ落ちて止まらない。
「加勢」
小崎が俺へとタオルを被せる。
「う、うう」
「ほら、涙を拭けよ」
肩を組むように腕を回し、タオルの端を掴んで涙を拭い取ってくれる。
「ごめん、泣くつもりじゃなかったのに」
「いいや。すまなかったな、真一がお前を泣かせるような真似をして」
静かな怒りを小崎から感じ、
「小崎、お願いだから澤木君には今日のことを言わないで」
これ以上、澤木君に嫌われたくない。その一心でお願いする。
「だめだ。お前を泣かせたんだぞ?」
「小崎、ありがとうね。でも、お願いだから」
「わかった。だが、この件に関して口を出さないのは今回だけだ」
解ったなと念をおされて俺は頷く。小崎って兄貴肌だよなぁと思いつつ。
「あのさ、なんで俺を嫌いじゃないと思ったの?」
「加勢は良い奴だし、傍にいると落ち着くしな」
だからだと言う小崎に納得できないという顔をすれば、タオル越しに頭を撫でられた。
「もし、辛いのなら俺がお前の代りに図書委員になるが」
「大丈夫だよ」
また辛くなったら話を聞いてよと言うと、いくらでも聞いてやると言ってくれた。
小崎の思いが嬉しかったから。だからもう少しだけ頑張ってみようと思った。
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