きっと皆、完璧な人

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幼い頃は、大人はみんな完璧な人だと思っていた。 欠点なんて無いのだと。 だって柔らかなお豆腐を崩さずに箸で持ち上げれるし、ぷりぷりして滑りやすいコンニャクだって上手く摘まむ。 味噌汁と言う水分の為に、とても掴み難くなっているのにね。 子供心に大人は凄いなあと、握り箸で豚汁をかき込みながら思ったものだ。 後、こんな美味しい物を作れるのも凄いなあって。 料理を作る手際は魔法にすら思えた。 自分じゃゴロゴロと不揃いに歪にしか切れないキュウリのスライスだって、トトトトトンと薄く均一に綺麗に揃えてこしらえるし、それをただ酸っぱいだけ、しょっぱいだけ、甘いだけの調味料を絶妙に、しかも目分量だけで量って混ぜ合わせた魔法の液体で酢の物に変えてしまう。 本当に大人と言う存在は、完璧なもの何だと思っていた。 でも、今は。 二十歳を過ぎて、自分はその完璧な大人には成れていないなと思う。 料理はそこそこ慣れたとは言えど、片付け、掃除も面倒だからと週末のみ。 全然完璧な大人じゃない。 なのに、どうしてかな? どういう事なのかな? 姉さんの子供は、何時も自分をキラキラと羨望の眼差しで見上げて来る。 まるで、この人には出来ない事は無いのだと言わんばかりに。 ……そんな期待を込めた目で見られたら、完璧なフリをしなくちゃならないよ。
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