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「海竜のキングだ。仲良くしてやってくれ!」
『あらやだ!私のことはクイーンと呼んでちょうだい。』
頭の中に響くその声は、凄まじくドスのきいた野太い声だった。
「変わってるだろ?オスなのになー。」
人魚はケラケラと笑っている。
『ほら!言葉遣いが乱れてるわよ!』
「もー、いいじゃない!言葉遣い面倒臭い!」
『ダメよ!女の子でしょ!』
青年は目の前のやり取りを見て、最近姫がたまーにだけど女の子っぽい言葉は使うのは海竜に言われてだったのかと納得した。
「友人と同じこと言う……」
むくれる人魚に苦笑しつつ、青年は海竜と挨拶を交わした。なんだか仲良くなれそうな気がする。
『あらいい男!』
撤回。ちょっと苦手。
その後海竜は近くの海に問題があった為に見廻りをしていたと聞いた。明日には魚が帰ってくると聞いて、青年は港に帰っていった。
ーーー
「茂じぃ、なんか釣れた?」
港に帰って早々、青年はいつも釣りをしているじいさんに声をかけた。
「今日は釣れんわい。海竜がおる。」
青年はやっぱりわかるのかと苦笑した。
このじいさんは海の天候や海の中の事を当てるので有名だった。
たまに人魚や竜や乙姫なんて話も出るので、この辺りの名物ジジイになっている。
全部本当の話なのかな?と考え込む青年の前で、茂じぃこと茂蔵は見覚えのある箱を取り出した。
「茂じぃ…それ……」
「おう。ロイ○のラム酒味じゃ。好物での、お取り寄せしとるんじゃ。」
人魚も好きでのぉと話す茂蔵。
青年は遠い目をしていた。
ーーー*ーーー*ーーー
「暇だー」
人魚はいつも通り青年の船の回りを漂っていた。
「そりゃよかったなー」
青年はいつも通り仕事をしていた。
一段落して青年が人魚をみると、人魚は海面に漂ったまますやすや寝ていた。
「姫ー起きろー。」
竿でつついても起きない。
港に帰る時間なので青年は放置したまま帰っていった。
夜中に目覚めた人魚は大変不機嫌で、朝になるまで歌い続た。
海が荒れた。
ーーー
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