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「あ~だるいわ~」
少し沖の海面に人魚が浮いていた。さもだるそうな人魚の姿は、物語の人魚姫のように下半身は魚だが、上半身は人。
違いと言えば貝殻ではなく鱗と透けるヒレのようなものでドレスを着ているように見えるところだろうか。そして赤毛の髪は綺麗に結い上げられ、一部だけ海に漂っていた。
「だるい~」
すっかりだらけて浮いている人魚は、近くにあった漁船の回りで浮遊していていた。
「暇そうで何よりだな。」
苦笑しながら船から人魚を見下ろすのは二十歳後半くらいの青年。慣れたように人魚に酒瓶を投げる。
人魚は途端に海面から飛び上がり、嬉々として酒瓶をキャッチした。
派手に海水を巻き上げた後、海面に顔を出して早速酒を飲み始める。
「ぷはっ!やっぱこれだね!ありがとー」
心底幸せそうな人魚を眺め、「どういたしまして」と言いつつ青年は海水をかけられて少し不機嫌そうだった。
ーーー*ーーー*ーーー
「今日も暇だなー」
「暇なら鯛でも取ってきてくれ」
青年は相変わらず暇そうに浮いている人魚に口を尖らせた。
そして、どうせなら釣りしてみるか?と竿を渡すと意外にも釣りを始めた。
海面に顔をつけたり糸を巻き取ったり忙しない様子に青
年は微笑ましくなった。
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