鈍色

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流水のように冷たい初秋の風が、私の脇をすり抜ける。 ふと目線を上げると、シャーベットブルーと淡いオレンジのにじんだ空が浮かんでいた。 その色は、今にも私の背後から迫り来る夜の深藍に侵蝕されてしまいそうなほど弱々しい光彩だった。 快とも不快とも言えない冷涼な風がまとわりつくと、私は反射的に身震いした。 昼間は少し汗をかいてしまうほどの暑さなのに、この日が落ちてからの身に染み入る寒さはなんだ。 例年のことながら体温調節のためにアウターを着たり脱いだりするのを面倒と言わざるを得ない。 街を往来する学生が窮屈そうに羽織っているブレザーの擦れ合う音が冬の到来をささやき始める中、仕事を終えて足早に帰宅する私もまたその往来の一部であった。
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