第10章  臨時同棲

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「香奈、家事全部なんかしなくていいよ」 「うん。でも、居候させてもらうんだから、 せめて、それくらいはさせて欲しいんだけど」 「そりゃ、してくれるのはありがたいし嬉しいけど。 でも言った通り、俺、しばらく帰りが遅い日もあるから。 食事だって家でしない時もあるし、香奈にだって仕事があるんだから。 洗濯も、掃除も、週末に一緒にすればいいじゃない」 「でも、それじゃあ……」 しかし、言い掛けた私の唇を、言葉ごとリップ音をさせて啄んだ。 「俺は、君に、家事をしに来てもらってるわけじゃないよ。 必要な物は、自由に使ってくれて構わないけど、 いつもと変わりない生活をして欲しい。 っていうか、背負いこむ事だけはしないで。 そういうの、前の奥さん思い出しそうだからさ」 そう言われては、こちらも同じバツのつく身としては言葉がない。
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