第1章

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目が覚めた。辺りを見渡すと、 正常値を示す心電計 綺麗な花が生けられた花瓶 自分はとある病院の病室で寝ていた。 つまりは、 生きていた。 側にいた自分の両親が慌てて駆け寄ってきた。 「痛いところはないか?」 当然の事ながら充分痛いが、それよりも、聞かなければいけない事があり、身体を起こそうとしたが、傷の傷みで身体が起こせず、仕方なく寝そべったままで両親に聞いた。 『優衣』はどうした、と。 自分の問いに、両親は下を向いて答えなかった。 両親の反応に、自分は事の顛末を悟った。 やっぱり……そうなったか、と。 ふと、自分の目から一筋、涙が零れた。 自分は、 傷の傷みで、涙を拭う事が出来なかった。 両親に、もう少しだけ寝ると言い、自分は両目を閉じ、また眠りについた。 退院して間もなく、警察から、自分が悟った通りの顛末を聞いた。 『優衣』は、自分を刺した後、 自殺した、と。 優しかった『優衣』。 自殺したのも、きっと、死後自分を一人にさせたくないという思いからだろう。 本当に、自分は罪深い男だ。 結局、自分は二度も、愛する人を殺した事になる。 いくら世間が自分に非がないと言っても、自分が関与した事に変わりはない。 自分はこの業を一生背負うつもりだ。再びそれを繰り返さない様に。 だから、共に歩んでいく。 美穂子と。 いや、 三人目の『優衣』と。
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