第1章

7/10
前へ
/10ページ
次へ
「だから私は決めたの。私が優衣姉ちゃんになって、お姉ちゃんの理想だった『優衣』になって、 必ず復讐することを。」 『優衣』の言葉に、自分の涙がピタリと止まった。 「私が『優衣』になってからいっぱい頑張ったわ。周囲から貼られていたレッテルの払拭、友達との絆の構築、 そして、 貴方との付き合い。」 『優衣』の口から放たれる言葉に、自分の胸の鼓動が段々と早くなり、追い詰められているような感覚に陥っていた。いや、今を思えば最初から追い詰められていたのだろう。 そんな自分などお構いなしに、『優衣』は話続けた。 「貴方と付き合ってく内によく分かったわ。 貴方が私達の事なんて全く知ろうともしなかった事に。」 顔を上げた『優衣』を見て、自分は恐怖した。剥き出しの殺意で此方を睨み付けていたからだ。 「最初はお姉ちゃんの代わりとして付き合ったけど、日に日に貴方の事を思うようになって、本当に貴方の事を好きになってしまった。『優衣』としてじゃない、『幸子』として。でも貴方は私を見ようとしなかった。貴方はお姉ちゃんの事を想ってた。そればかりか他の女にすらも。」 他の女…? 『優衣』の言葉に疑問を感じた自分は、恐怖で怯える口を何とか開けて聞いた。 他の女ってのは誰だ、と。 優衣はふざけないでと一蹴した。 「知ってんのよ私は!!私が居ないところでこそこそ会ってるでしょ!!? 美穂子と!!」 『優衣』は、自分と美穂子が密かに付き合っていたと思い込んでいたらしい。 何ということだ。 嫉妬心から姉妹に勘違いされ、それが原因で愛した二人が壊れてしまったなんて。 それを知らずに今まで呑気に過ごしてきただなんて。 今更後悔しても、後の祭りだった。 また、あの時の様に、『優衣』が包丁を取り出した。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加