第1章

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「お姉ちゃんは、私に託したの。貴方を殺すことをね。これでやっとお姉ちゃんも、私も、この苦しみから解放される。」 包丁の刃先を自分の胸に向け、迫る『優衣』。 あぁ…『優衣』、あの時こんな感じだったのか-- 聞いていた事が再現されたようで、自分は心が締め付けられる思いに駆られた。 どんな形であれ、自分が知らないところで、自分のせいで、自分が愛した人が苦しんでいた。そして、目の前の彼女も。 その姿に自分はもう耐えられなかった。 自分は、両手を横に広げた。 自分が死んで、愛する人が楽になれるのであればそれで良い。 先程までの恐怖は消え去り、死ぬ覚悟が出来ていた。 暫くして腹に激痛が走り、それが刺されたと実感した瞬間、そこで意識が途切れた。 意識が無くなる直前、ぼんやりとではあるが、彼女の姿が見えた。 彼女は、 泣いていた。
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