6人が本棚に入れています
本棚に追加
1
隠すことは無限の可能性を生む。
もし目の前に、箱があり、かつ閉じられたものならば、そこには無限が詰まっている。
これは、箱ガールにまつわる物語である。
ゆえに、たとえ箱という存在が、あなたに襲いかかっても、なんら不思議ではないのだ。
2
もし、きみが街で箱ガールを見かけたら、決してその箱を奪おうなどと思ってはならない。嘘だと思うなら、一度やってみるといいだろう。なあに方法は実に簡単さ。箱ガールの視界に入りこまぬよう注意しながら背後にまわりこみ、両手で箱をつかむ。このとき箱がへこまない程度の力でするのがコツだ。そのまま手早く箱を掲げるようにすれば、箱は一瞬で抜ける。だが、しかし、きみは箱の中を見て後悔するに違いないのだ。
ビルの壁に寄りかかり、灰色の雲を仰ぎ見た。大粒の雨が僕の目をしつこく洗う。豪雨だった。となりでうずくまる黒い影に視線を移す。歪んだ視界。はっきりと顔は拝めない。
最初のコメントを投稿しよう!