箱ガール

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 世論調査によると、現代の少女たちの過半数は、下半身より上半身を見られることに羞恥心を覚えるらしい。信じがたい話かと思われる。だが、実際に街を歩けば、パンツが丸見えでも平気な顔で歩く少女たちが目につく。昔ならば、目くじらを立て主婦連やPTA、マスコミたちが声を荒げて批判しただろう。それが現代では、ファッション、あるいはアートとして扱われている。  代わりに、上半身を隠す少女が格段に増えた。その最たる例が、箱ガールであろう。上半身をすっぽり箱で囲み、他者の視線をシャットアウト。小さな覗き窓を頼りにし、のそのそと歩いている。その存在はまだマイノリティな部類であるが、いずれマジョリティな部類に昇格するはずだ。  ところで、この上半身を隠すという行為だが、考えてみれば、その兆候はすでにあった。化粧やパッドがよい例である。あれらは偽っているのではなく、隠していた。こう解釈すると、わかりやすい。  つまり、少女たちは今も昔も形は違えど、上半身に羞恥心を抱いていたのではないのだろうか。             (比良研三『羞恥心の行方』より)
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