01-プロローグ。「期間限定」

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 全てのものには期限がある。  物だけじゃない。人の命や感情にも。  永遠の愛だ。なんてロマンチストは言うけれど、そんなの幾十年後にどうなっているかなんてわからない。  もちろん早乙女(さおとめ)篤(あつ)はそんな幻想を信じていなかった。  しかし、彼は思う。  それらはきっと限りあるから美しくて儚いのだろう、と。  だからこそ人は永遠を求めるんじゃないか。いや、永遠であってほしいと思うんだ。  あの時、この場所で、優月(あいつ)といたことを。その事実を。永遠にしたいんだ。  なんて、性に合わないことを考えてみる。  これを聞いたら優月(あいつ)は笑うだろうか。  愚問だ。間違いなく爆笑する。  腹を抱えて「くっさー! 身震いがするー! 死ぬぅぅぅー」とか叫びながら、篤を小馬鹿にするような目で数時間は笑い転げるだろう。  思い出しただけで左手はデコピンの構えを作った。  しかし、その笑顔にもやはり終わりは来たのだ。  そして、終わりが来ることには相対して始まりがある。  篤はそこに来ていた。始まりのその場所に。  右脇には今どき珍しい筒入りの卒業証書。左胸には桃色のチューリップが刺さっている。  見渡した桜並木に花はまだ咲いていない。  桜にだって花を咲かす期間はある。基本は春限定で、今は三月も頭。だから相変わらずこの場所は寒々しい。けどいいのだ。その日も桜は咲いていなかったから。  高校一年の十月末。それはすごく中途半端な時期だった。年間の行事もほとんどやり終え、一段とこの並木が寒そうに風に靡いていたその日。  優月(ゆづき)は篤に言った。  まだ、互いの事をまったく知らないというのに、優月は不敵に笑って言ったのだ。 「――一ヶ月限定であたしの彼氏になりなさいっ!」
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