ー前知ー

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私には、どうしても忘れることができない男がいる。それは決して恋愛感情等の意味ではない。言うならば、恐怖によるものだ。 その男に初めて会ったとき、皆の緊張を解き、誰に対しても優しく接したことから良い人だと錯覚していた。 だが違った。彼は表面的には誰に対しても優しい人間だが、本当の姿は人の皮を被った化け物だった。 彼には人間のように感情もある。また、善悪を判断する脳味噌だって備わっている。だが、それでも、彼が化け物であるということは、私が一番知っている。 もしも夢なら覚めてほしいと何度も願った。だけど、彼と共に過ごした時間はまぎれもない現実だった。 私は知っていて、彼を止めることが出来なかったのだ。もしも、気付いた時に彼を止めていれば、あんなに犠牲者も出さなかったかもしれない。 県立○○高校1年2組。比較的賑やかで、善い生徒が集まっているクラス。だけど、この中に化け物がいる。 いや、化け物なんて、生易しい表現ではないかもしれない。彼はまるで神にも劣らぬ威圧感を発し、必要とあらば、人を殺すことも厭わない。 ーーーそう。まるで、死神のようだった。
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