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その瞬間、明らかに本で隠れていた顔の中に動揺が見られた。クラスメイトなのに何を怖れているんだと佐々木は心の中で溜め息をつく。
「愛田羽さん。今度よかったら一緒に出掛けようよ。」
これは賭けだった。いくら嫌っている相手とはいえ、誘いを受けたら無碍にはできないだろう。
しかも愛田羽は押しに弱いと見える。佐々木は勝利を確信したかのように微笑を浮かべた。
「愛田羽さんにお勧めの小説を読ませてあげたいんだ。それに遠足が終わったらテストも近い。愛田羽さんは勉強も出来るし、一緒に勉強もしてみたい。」
佐々木はあと少しだなともう一歩近づいた。これは会話術などではなく、一種の脅迫。あわよくば、彼女を自分のモノにしようとしていた。
佐々木が更に言葉を発しようとした瞬間、本来ならこの教室に足を踏み入れるはずがない者がそこに現れた。
「海音から離れろよ。」
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