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「そ…奏?」
彼女がその者の名前を呼ぶ。背丈は高いとは言えないが、程々にガタイはいい。佐々木は直感した。
ーーーこの者は何かしらの体術を得ていると。
「君は愛田羽さんの彼氏さんかな?」
「……ああ、そうだ。海音から離れろよ。」
佐々木は嘘だなと思った。答えるのに若干の迷いと数秒の間が空いた。人間が嘘をつくときの特徴に近い。
「そうなんだね。安心していいよ。今、小説等で語り合おうと遊びに誘っていただけだから。」
事実、そうなのだから自分には何も不利な点はない。彼は首をポキポキと鳴らし、少しずつ距離を縮める。
「俺はさっさと離れろつってんだ!」
どうやら相当お怒りらしい。佐々木は渋々、愛田羽から距離を取った。その際に彼に訊ねる。
「君。名前は何て言うのかな?」
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