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「中越奏だ。」
彼は悪怯れずに答える。佐々木は思わず苦笑する。もしも彼の前で愛田羽海音を玩具の如く弄んだのなら、どんな顔をするのだろうかと。
「2人の時間をまぁ、楽しんでよ。愛田羽さん。彼氏が怒ってるから、どうやらデートは無理っぽいね。」
敢えて“デート”という言い方をしたが、中越は特に反応を示さなかった。佐々木は内心つまらないなと思いながら、教室を出ていく。
それにしても、2人して自分を怖れている。または脅威と感じていることは些か疑問である。
ーーーさて、どうしたものか。
佐々木は解決策を考える。そして2人が自分を警戒している理由を思案する。だが、過去の自分を思い出そうとすると頭が痛むばかりである。
脳裏に「邪魔者は排除すればいい」という無邪気な子供の声が聞こえた。佐々木は空耳だと思い、再び自販機へと足を進めた。
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