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まるで現実から逃れるかのように俺はまた屋上に向かう。本当ならばもう二度と登ることはなかった階段をもう一度踏みしめる。
昨日家に帰り、変わらぬ一日が過ぎて今日は始まった。
また懐には遺書がしっかりと入れられており、性懲りも無く俺は死のうとしている。
でもどこかでまたそれとは違う別の感情があるのは事実だ。
ゆっくりと上りきった先には昨日と変わりの無い屋上へと続く扉。俺は躊躇うことなくそこを開ける。
昨日と同じように綺麗な夕日を想像したけど今日は生憎の曇り空。どんよりとした分厚い雲が空一面を覆い尽くしている。
「やっぱり昨日だったな」
なんて声に出していた。
「お前、懲りもせずまた来たのかよ」
「そう思うなら、気を利かせてよ」
「それはムリ、ここはオレの居場所なんだよ」
少しだけほんの少しだけだけど、周防帝の”オレの居場所”という言葉が引っかかった。でもそれを追求することはなく、胡座を掻いて座る周防帝の隣に何故か腰を下ろしていた。
「隣、座っていい?」
「もう座ってるだろ。好きにしろ」
彼は口調はぶっきら棒で冷たく聞こえるけど、内側にある優しさを感じた。
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