朝礼台の人影

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「そこに立ったら、みんな、話すことに夢中。あるいは緊張していて余裕がない。だから、背が低い順の列の最後尾にいたアタシには気づいてくれなかった。あんなにふらふら揺れてても、しゃがみこんでも、そのまま倒れても…誰も気づいてくれなかった…」  この女子は、いったい何を言っているのだろうか。  隣を見た俺に、それを問う余裕はなかった。  さっきまでそこにいた存在が影も形もなく消えている。隠れているとかではなく、本当にいない。  かなり日が傾いた人気のない校庭。俺の隣にはいわくつきの朝礼台。  思いがけなさすぎる経験に、たちまちま俺の意識は闇に飲まれた。  …正気に返ってからのことは、周りの友達のおかげで全部把握している。  一人、不可抗力で取り残された設定の俺。示し合わせ通りに皆と別れ、朝礼台へ。そこで暫く突っ立っていると思ったらいきなり倒れた。  幸いにも、この件はそこまで大事にはならず、世間は次第に忘れていったけれど、当事者の俺ははっきりとおぼうている。そしてきっと、この先忘れることはない。  朝礼にまつわる七不思議。その中には、真実があやふやになったせいで語られることもなく、忘れられてしまう話がたくさんある。  でも、この学校の七不思議がそういうものでも、俺は絶対忘れないから。この哀しい話と、俺を失神させた相手のことを覚えているから。  今は誰も側にいない朝礼台。その傍らで、あの女の子がひっそりと笑っている姿が見えた気がした。 朝礼台の人影…完
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