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朝礼台の人影
どこの学校にもたいていある『七不思議』という怖い噂。
音楽室のピアノが勝手になるとか、理科室の標本模型が動くとか、そういうのだ。
ウチの小学校にも、七つはないけどいくつかの噂がある。
その中で最も信憑性が高いと言われているのが、朝礼台の人影の話だ。
朝一番に登校してくると、朝礼台の上に誰かが立っているのが見える。だけど近寄ると消えてしまう…とか。
部活も何もかもが済み、誰もいなくなった校庭。そこに一人きりで行くと、朝礼台から誰かが手招く…とか。
いくつか違うパターンの噂が出回っているけれど、舞台必ず朝礼第。そこだけは統一されている怖い話。信憑性は半々てとこ。
だって、いくら部活が終わっていても、そう簡単に校庭から人がいなくなることなんてない。そもそも部活上がりなら、帰る時はみんな一緒。一人になんてなりようがない。
朝バージョンの方も、わざわざ朝一に用事があって来てる奴が、朝礼台なんかに意識を向けてる暇はない。誰かいたとしても気にしない、近寄って相手を確かめようとも思わないだろう。
小学校の七不思議だから仕方がないけど、作り話としても詰めが甘いって感じなんだよなぁ。
でも、怪談的にはむしろこの半信半疑感が受けて、高学年を中心に挑戦者もチラホラ。ウチのクラスでも、何人かが朝早くから学校へ来たり、逆に遅くまで居残ってたりと、噂の真相を追求中。
そんな熱が高まって、興味のない俺も真相究明に駆り出されることになった。
バージョンは夕方。帰って行くフリをしたみんなが校門近くで待機しているところへ、一人だけ遅くなったふうを装って俺が現れる。
その時にわざと朝礼台近くを通り、異変があったらみんなに知らせる。
…朝礼台に近づくのは確かに俺だけど、みんなが遠くに潜んでたら、それは本当の意味での『一人』じゃないから、人影は現れないんじゃないだろうか。
よっぽとまでそう言おうと思ったが、クラス中が盛り上がっていたので、ここはあえて無言を通し、クラスの一致団結力を高めることに協力しよう。
そう決心して、下校時間を過ぎてもなんやかんやと校内に居残った末、俺は仕組まれた帰路についた。
校舎の外までみんなで出るが、俺一人だけが理由をつけて引き返す。本当は教室まで戻った方がいいんだろうけれど、面倒だから靴箱の片隅で時間を潰した。
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