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それでも私はシオンがいてくれたから、毎日を楽しく過ごすことができた。
彼と一緒に過ごすことが幸せだった。
私と彼は
クライアントと護衛で
人と機械で
感情の塊のような娘と無感情な青年で
私の想いが正確に通じることなどないのだろうけれど。
でも、人間同士だって気持ちがすれ違うのだから、私とシオンが分かり合えないのも当然かもしれない。
もしかしたら、シオン自身もわかっていないだけで、彼にも心があるのかもしれない。
私自身の『心』を取り出して見せることもできないのに、どうして私(人)には在って、彼(機械)には無いと言い切れるだろう。
ふと、ある童話を思い出した。
心を持った人形が、冒険を経て良心というものを学び、本物の人間になるというお話。
妖精が命を賭して人を守った人形の願いを汲んで、叶えてくれるのだ。
もしも、ねがいが、かなうなら────
「ねえシオン」
「どうした」
出しっぱなしだった植物図鑑をぱらりとめくって、私は提案した。
「腕がよくなったら、四つ葉のクローバーを探しに行こうね」
「構わないが……一体どうした」
くすくすと笑った私を、彼は不思議そうに眺めている。
「お願い事をしたいのよ」
────彼も知らない「心」というものを、見つけられますように
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