きみにクローバーの花束を

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もう、ずっと一緒にいるのに。 ずっと一緒に暮らしているのに。 これがお前のボディーガードだよ、と与えられて何年も経つのに 未だにその存在に、完全には慣れない。 ───いや、違う。 慣れたはずなのに 彼の姿をつい探して 彼の視線をつい追って 彼の手がふれることに身体がこわばるようになってしまったのだ。 ここ最近から。 この家には彼と私しかいないから、毎日が淡々と、しかし私にとって濃密にすぎていく。 それがとても幸福で、とても緊張する日々を送っている。 二人きりの生活が始まったのは、悲しいきっかけのせいだけれど。 それでも、今の私はひとりぼっちではない。そばに彼がいてくれるのだから、本当に幸福だった。 それだけで、よかった。
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