127人が本棚に入れています
本棚に追加
私は学校にも行っていない。
仕事もない。
だからいくらでも寝坊できるはずなのに、どうしても朝は決まった時間に目が覚めてしまうのだ。
「起きたか」
起き上がった私に応えるように、静かな声が横から投げかけられる。
目を向けるとテーブルに分厚い本を置いて、シオンがぺらぺらとそれを眺めていた。やたら分厚いので何を読んでいるのかと思ったら、植物図鑑だった。
「おはようシオン」
「ああ、おはようリナ。朝食にしよう」
私がベッドから抜け出すまで見届けることなく、彼は隣のキッチンへと移動する。
もう朝食を用意してくれていたらしい。というより、私の起床とほぼぴったりなタイミングで完成させていたらしい。相変わらず隙のない完璧超人だ。
完璧ではないただの人間である私は、ひとつ伸びをすると髪を適度に梳いてからクローゼットを開ける。
ブラウス・カーディガン・スカートといういつもの格好に着替えてダイニングに向かうと、シオンがてきぱきと朝食を並べてくれた。
最初のコメントを投稿しよう!