きみにクローバーの花束を

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私は学校にも行っていない。 仕事もない。 だからいくらでも寝坊できるはずなのに、どうしても朝は決まった時間に目が覚めてしまうのだ。 「起きたか」 起き上がった私に応えるように、静かな声が横から投げかけられる。 目を向けるとテーブルに分厚い本を置いて、シオンがぺらぺらとそれを眺めていた。やたら分厚いので何を読んでいるのかと思ったら、植物図鑑だった。 「おはようシオン」 「ああ、おはようリナ。朝食にしよう」 私がベッドから抜け出すまで見届けることなく、彼は隣のキッチンへと移動する。 もう朝食を用意してくれていたらしい。というより、私の起床とほぼぴったりなタイミングで完成させていたらしい。相変わらず隙のない完璧超人だ。 完璧ではないただの人間である私は、ひとつ伸びをすると髪を適度に梳いてからクローゼットを開ける。 ブラウス・カーディガン・スカートといういつもの格好に着替えてダイニングに向かうと、シオンがてきぱきと朝食を並べてくれた。
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