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「告白…されたの?」
「…はい」
「好きなの?その男のこと」
「…は…い」
自分の中に落とし込むために、そっか、と小さく呟いた。自分を、納得させるため。
うん。間違っていない。
由宇の選択は、間違ってなんかいない。
「信じてもらえないかもしれないけどさ、本当に嬉しかった。由宇とこうしてまた、当たり前のように一緒にいられて」
「なんの…ことですか?」
「うん。ほら、俺たち、というか俺が、昔あんなことしたからさ」
由宇の姿が、霞む。周りの視界ははっきりしているのに、由宇だけが、霞んで見える。
後悔、しなかったって言ったら嘘になる。あの日のこと。でも、我慢なんてできなかった。できるわけがなかった。
初めて会った日から、あの瞬間から、俺の五感は俺に言っていた。
運命だ、って。
「だってお前、可愛すぎ」
ちゃんと、笑えているだろうか。いつもの、間宮藤次郎だろうか。
「この会社に入ってきれくれたことも、俺と普通に接してくれたことも、俺に抱かれてくれたことも、全部。全部、すげえ嬉しかった」
トラウマになっても、おかしくはなかった。大切な初めてを、急にやって来た隣人に奪われた。
嫌悪されてもおかしくはなかった。いくら上司だとはいえ。
それでも、由宇は拒否しなかった。
もしかしたら、本当に“神様”ってヤツはいるのかも、って。
一度も信じたことのない俺も、思ってしまうほど。
「俺はね、由宇。馬鹿だから。外見で苦労したことなんてないし、それなりに良い大学も出たし、仕事も順調だし、女の子にも不自由したことはないけどさ…」
でも、大切なものに気付くのは、すごく遅かったみたいだ。
「多分、初めて会ったときから…俺は、由宇のことが好きだったんだよ」
本当、遅いよな。
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