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天気予報が終わると、彼は時間を確認してテレビを消した。
今日の気温は13℃。
秋と冬の間にある11月にとっていつも通りの寒さ、といったところだ。でも、マフラーなどの防寒具が恋しくなってくるこの時期。どこに仕舞ったかも覚えていない防寒具を探すのには時間がかかりそうだ…。そう決めつけ、彼は取り出すのをあっさりとやめてしまった。
今年の春から、この岬町の高校教師として勤務している竹谷祐輔はこの町に来て初めての冬を迎えようとしていた。
毎年この町は雪が降ることで有名で、今年も例年通り11月下旬に降るらしい。
さっき消した地方テレビの天気予報士が言っていた。
どおりで寒いわけだ、と竹谷は勝手に納得した。
体育教師である竹谷。
外でするスポーツを担当としている彼にとって天気予報確認は毎朝の日課となっている。
真夏の晴れの日は気が乗らないが、梅雨の雨の日はルンルンになる。今日は寒い日の晴れ。1番それが厄介である。
もともと暑がりな竹谷だったが、都会とは比べ物にならないくらい岬町は冷えるのだ。昔から住んでいる住民たちにとってはへっちゃらかもしれないが竹谷には耐えられない。
「今日は4つ……。」
4つ、というのは今日彼が任されている授業数。だから竹谷は4回は確実に外に出なければならない。
竹谷が勤務する高校は全学年で15クラス。その全ての体育のグラウンド競技を任されている竹谷は毎週同じことの繰り返しなのでいつの間にか覚えていたのだ。
あー、雨降んねぇかな。と淡い期待を寄せながら起毛のジャージを身にまとい、自宅をあとにした。
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