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それは松枝さんの言う通りかも知れない。
雪だるまって胴体作ったら顔も作ってくっつけないと出来ないから、一人でやるとなると物凄い労力が必要だ。
「ムムム。あくまで推測小説の種として言っただけよ」
「出たわね。作家の三種の神器。夢オチ、妄想オチ、ネタオチ」
「良いもん。じゃあ他のを考える」
さっちゃんは即興で捻り出した(即興には思えなかったが)ネタを完膚なきまでに否定されたので拗ねてしまった。
「でもそれ。推理小説にしたら面白そうです」
星上さんはさっちゃん達のお話が滑稽に映ったのか、クスクスと笑い始める。
「出版したらあたしがお店で宣伝したげる。本市挿絵渾身の堪能ミステリー発売、タイトルは“雪だるま殺人事件”――」
種村さんが言った。種村さんは古本屋の店主でさっちゃんの推理小説も店頭に並べている。
元は新刊も販売していたらしいのだが先の第ニ次世界大戦で海外の作品は全てお店ごと焼却処分されて元店長の一寸木正也さんは失踪。
終戦後。種村さんが新たに古書店としてお店を建て直したと言っていた。それでもコッソリ洋書を隠し持っていると明かしてくれたが……
「雪だるま殺人事件って…せめてさ、“背徳の魔女にスノウメイデンを”とか“ウェンディグドレスの罠”のが良いと思うけど」
「原稿書いたら教えてね。楽しみが増えちゃった」
「私も読んでみたいです」
言いながら、星上さんはさっちゃんの方を見る。私は読んでみたいような。怖いような……
「面白そうな話ね。でも私達は、モデル申請にいくのが目的でしょ」
久留米さんはそう言ってワゴン車の皆を纏め込んだ。
「そうでした…」
「で。疑問なんだれどさ、月下さんはどうやって私達の内からモデルを選ぶんだろ?」
「ううんと。恐らくは一人一人面接みたいな形で話してみてから決めるんじゃないでしょうか?」
多分。あの屋根裏部屋で……。
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