種村奈緒

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        【1】  「本日は寒い中よく此処まで来て下さいましたね。早速面談といきたい所ですが、皆様はさぞや空腹でしょうから先ずはお食事でもなされては如何です?」  月下邸の広々とした畳の客間に集まった私達に、氏は食事を提案した。都市部から此処まで来るのに私達は何も口にしてなかったので有り難い。 客間では中央の掘り炬燵が体を温めてくれて、布団と毛布のふっくらとした感触もいい。客間隅でこうこうと燃えながら熱を出すストーブの温もりも何とも言えない。  「お腹ペコペコです。月下さん。ついでにお酌は頂けて?」  「お酌って…」さっちゃんは遠慮がない。訪問していきなりお酌を注文とは。  「ははは。お酒ですか? 良いですよ。お付けしましょう」  氏はパンパンと手を叩き女中さんを呼び出しながらそう言った。  「すんませんね初対面なのに」  出海さんは、何故か照れ笑いを浮かべながらペコペコと月下氏に謝罪した。  「彼女達を招いたのは私ですからお構いなく」  そう言えば、先日呼ばれた時は、屋根裏のアトリエしか見ていなかったけれど、客間の天井の壁には氏の先代と思しき写真が数点飾ってある。  「月下さん、お写真撮影して構いませんか?」  氏に申請してみる。  「ええ。構いませんよ」  氏は客間に飾られた写真の撮影を許可してくれた。私はポラロイドカメラを構えそれらを激写する。
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