種村奈緒

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 「射殺だと遺体が損傷しちゃうから、男の美意識に反するわね。そう男は遺体を雪だるまに隠す目的を見いだしてしまう」  さっさゃんまだ続ける気だ。お酒がかなり進んでいるから脳内推理が白熱してしまっている。  「エドガー・アラン・ポーの主張と一致する“死の瞬間こそが最も美しい”と言う新たな価値観を覚えるの。遺体の冷凍保存こそ死の瞬間を永久的に自分のものにしようとする。死の瞬間を描いた絵画を――」  「さっちゃん…明るくなるような話ないかな?」  最後まで訊いたら眠れなくなりそうなので話題を変える事にした。  「雪だるまで?」  雪だるまはどうしても外せないらしい……。  「怖くなければ」  「じゃあこういうのは? 雪だるまの中にお宝が隠してあってそれを、掘り当てた人が所有権を獲得出来るの」  雪だるまを使った宝探しか。楽しそうな話になった。  「お宝って何が隠してあるの?」  遺体じゃない事を祈りながら訊いてみる。  「私だけが喋ったんじゃ面白くないから、皆で考えてみて」  「百万円が良いっ!」  綺羅さんが挙手した。お金は私も欲しい。  「宝石掘り当てたい!」  松枝さんだ。宝石も良いな。たまには綺麗な宝石着けて歩きたい。  「貴金属かな。時計とかの」  種村さんだ。時計か、私も古い時計そろそろ買い替えたい。厭。掘り当てたら唯なんだろうな。  「指輪だと良いな。当ててくれた人は運命の人です、とか――」  久留米さんだ。雪だるまの指輪で結ばれるなんて運命的と言うかロマンティックだと思う。まるで他の雪だるまや降り積もる雪までもが二人を祝福してくれているような気分に浸れるかも知れない……
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