種村奈緒

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        【2】  私達はお鍋で舌鼓をうって体を温めると、お酒を窘めてから一人ずつ月下氏のアトリエに向かう事にした。猪のお肉は鯨の赤身に似ており癖がなく食べられるし、熊のお肉は冬眠前に食べた団栗が由来してかサラサラ脂肪が脂っこさを感じさせない。どれも都心部では食べられない味だった。  「誰が一番手で面談に行きますか?」  私はさっちゃん達に訊ねてみた。  「此処は平和的にじゃんけんで決めない? 最初に勝った人が一番手でどうかしら」  久留米さんが提案すると。  「乗った!!」  さっちゃん達は声を揃えてそう言うと、じゃんけんを始めた。これなら平和的に順番を決められる……事はなく、流石に六人も対戦相手がいたら、あいこが連続して、なかなか決着が着かない。それどころか三本指のチョキがあったり、四本指のパーが出たりしてじゃんけんではなくなってしまっている。  「埒が開かないから私が先に行って来る」  種村さんが痺れを切らして、一番手を名乗り出た。  「その方が良いと思う」  さっちゃんはじゃんけんに疲れてしまったようだ。  「種村さん一つお願いがあるのですが…」  綺羅さんは種村さんそう言うとこう続けた。  「面談の傾向と対策を練りたいので、其方を後程教えて欲しいんです」  なる程。それはそれで少し狡い気もするが、面談を有利に進めるには良い方法かも知れない。  「了解」  「私は面談の様子を取材するので同行します。では参りましょう」
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