月下美人

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        【2】 私は新聞社に戻ると、徹夜で新聞の記事の作成に取り組んだ―― 職場に到着した時間が遅かったので「こんな時間までどうしていたんだ」と怒鳴られたり、案の定「良いネタを掴んだなら俺達に寄越せ」と男性社員にたかられたが。  「月下氏は私を指名しました。なので今回は私が責任を持って取材しますのでお願いします」  編集長に頭を下げてお願いすると「それなら今回はお前が担当しろ」と珍しく許可を貰った。 それから豆球の灯りが頼りなく揺れる中、珈琲で眠気を殺すと、新聞の文字を打ち込み、アトリエの写真を掲載した。 男性社員達は以前に広島での原爆事故、三億円事件や帝銀の毒殺事件、日本赤軍のテロ事件など大きな記事を取材したものや、 またコカ・コーラ誤飲による死亡事故や和式トイレでの殺人事件など珍奇な記事を担当して来た為か。  「春画家のモデルの募集なぞとるにたらない記事だ」  とか、  「どうせ誰も集まらない」  と私を散々揶揄したが、それでも私は諦めずに明日の新聞の記事を完成させた。 記事を完成し終えるともう早朝の三時だ。蓄積した疲れで殺人的な眠気に襲われると、睡魔の誘いに身を任せるかのように私は会社のソファにどっかりと体を預けた。
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