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「那緒、起きろ。」
「ん……」
目を覚ますと、藤真が私の肩を揺さぶり顔を覗き込んでいた。
お母さんのお墓に体を預けて、私はいつの間にか寝入ってしまっていたようだ。
少し霞んだままの視界に、唇を小さく動かす藤真が映る。
なんて、言ったのかわからなくて瞬きを繰り返た私は彼の声に耳をすませた。
「……平気……か?」
全然、心配していないみたいな顔。
むしろ、面倒くさいって感じ?
「……ありがと。」
藤真はこの四年間お母さんの命日には、私と共にここにやって来て花を供え、手を合わせた後直ぐにどこかへ姿を消す。
それが、私とお母さんを二人きりにしようという気遣いだという事を私は知っている。
今の「ありがとう」は、そういう意味。
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