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「か、帰れないってどういう事ですか?!」 ロビー横の管理人室の出窓に、頭を突き入れた私は驚愕の事実に小さな悲鳴をあげた。 「さっき、役所から連絡が入ったんだ。この大雪で市内の交通機関は今日いっぱい運休ってね。」 七三にわけた白髪を撫でつけながら、管理人のお爺さんが参った参ったと、笑う。 都心部から離れた山奥。 こういった事には、慣れているのだろう実に悠長な佇まいだった。 「マイクロバスで駅まで送りますので、今日はビジネスホテルにでもお泊まりなさい。どれ、私の姪が勤めるホテルに聞いてさしあげましょう。ちょっと、待って下さいよ~。」 「いやいや……、待って下さいよ。ホテルって……」 機敏な動きで管理人室へと戻るお爺さんの背中に声は届かず。ギギギと、油の乗りが悪いロボットの様に振り返った私は、窓の外のどか雪に目を向けていた藤真の横顔を確認した。 若い男女が同じ屋根の下だなんて……、お父さんが聞いたら失神しちゃうよ。
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