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街に色彩を与えていた紅葉が、冷たい秋風にその身を任せて、アスファルトの上をカラカラと乾いた音を立てて、転がっていく様を、煙草を咥えたまま、ぼんやりと眺めていた。
千秋と出逢った時には、色付き始めていた頃だと記憶しているのだが、いかんせん曖昧だ。それだけ彼の事に、夢中になっていたから――
店員と客以上の関係になるべく、親しげに話しかけて、何とかキッカケを作り、騙した形で車に乗せたっけ。
「今となっては、懐かしい思い出だ」
ぼそっとごちながら、燻らせていた煙草の火を消すべく、車の中にある灰皿に押し付けた。あと少しで、コンビニの仕事を終えた千秋が出てくる。
今夜ホストの仕事がいきなり休みになったので、驚かせるべく、隠れて出待ちをしているのだが。外の寒さよりも、ワクワクした気持ちでいるため、寒さを感じずにいた。
寒がりな自分が寒さが平気なんて、可笑しな話だなと、笑いを噛み締めたとき、ドアを開ける金属音が耳に聞こえてくる。
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