トロけるようなキスをして――(穂高目線)

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 苦笑しながら、コーヒーを淹れて、千秋用のカフェオレも手早く作り、両手にマグカップを持って、リビングにあるソファに向かった。  そんな俺の姿を見、嬉しそうな表情を浮かべる瞳と目が合った途端、ふと思い出す。 「あ……」 「どうしたんですか?」 「ビンテージ物、忘れるトコだった」  とりあえずテーブルに、マグカップを置いた。  千秋が来た時に食べようと、冷蔵庫に入れてある物を取りに戻り、ニコニコしながら、千秋の隣に、隙間を空けず座り込む。布地越しだけど、伝わってくる体温が愛おしくて堪らない。 「一緒に働いてるコが、ボーナス使って北海道に行ったんだ。そのお土産なんだよ」  何だろうと見つめてくれる視線に応えるべく、包装紙を破って箱を開けた。その瞬間に漂ってくる、マスカットの香りに、ふたり揃って、箱の中身をじっと眺めた。
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