トロけるようなキスをして――(穂高目線)

16/24
前へ
/36ページ
次へ
「このカフェオレの方が、俺にとっては、ビンテージ物かも」  そして俺が喜ぶであろう言葉を、満面の笑みを向けて、言われてしまったら、どんな顔していいか、分からなくなってしまうよ。  頬に溜まっていく熱を感じながら、ふっと視線を逸らし、箱の中にあるチョコに手を伸ばした。 「嬉しい事、言ってくれるね。そんな千秋に、はい、どうぞ」  手で摘んだそれを、千秋の口元に持っていくと、恨めしげに俺の顔を上目遣いで見てくれる。  何かを企んでるでしょ? っていう表情を浮かべてくれる千秋が可笑しくて、笑いを噛み殺すのが大変だ。  実際は、俺の照れ隠しなのに、ね――  食べてほしかったので、チョコを何度かくちびるに当ててやると、諦めた顔して、手にしたマグカップをテーブルに置き、素早くぱくっと口に含んでくれた。 「――美味しい」
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

79人が本棚に入れています
本棚に追加