第2章 『記憶』

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体を起こそうとするが、再び激しい頭痛に襲われる。 「うっ !!」 「……あらっ、気付いたの!?」 頭を押さえながらも声のする方向を見る。そこには20過ぎぐらいの女性がピンクのジャージ姿で立っていた。身長は165ぐらいであろか、肩まで伸ばした髪は茶褐色の巻き毛で小さな顔。細長い眉毛の下に二重の大きな目と高くはないが筋の通った鼻、そして、小さくて愛らしい唇。美人というよりは可愛らしいという形容が似合う女性であった。 「無理しちゃダメよ。あと1週間ぐらいは安静にしてなさいって、お医者さんが言ってたわよ」 「ここは?」 「私のマンション」 「どうしてここに?」 と問うや、突然『ぐうーっ!!』と腹の虫が鳴く。 「あはははっ、体は正直ねぇ。まあ、丸2日も寝てたんだし。仕方ないか」 「丸2日も !?」 「今、お粥を作ってあげるから待っててね」 卓司は今初めて彼女のベッドの上に横たわっていた事に気付く。それと何故かしら上半身が裸で下はパンツ一丁であった。 「…(あれからどうなったんだろう?……あのビルの6階にいた事までは記憶があるが、その後が……思い出せない)……ところで、今日は何日?」 「えっ、7月23日だけど」 「7月23日 !?……ここは、もしかしたら札幌?」 「そうよ。それがどうかしたの?」 「…(札幌に着いてからもう4日も経っている……だが、その4日間の記憶が全くない)」 卓司は自分の置かれている状況を知ったところで部屋を見回す。俗に言う、ワンルームマンションで、部屋は飾り気がない程質素であった。
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