第13章 『野望』

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「それから太田から連絡が入ってますが……」 「そうだなあ、こちらから後で電話すると言っておいて」 「分かりました」 そう言って合田は応接室から執務室に向かう。執務室には既に河田が入っていた。 「ご苦労さん」 「あっ、総理、お疲れ様です」 河田は東京都出身、当選5回の衆議院議員で60歳、戦前の河田財閥を祖とする財界に結びつきの強い人物である。 「どう、マスコミ対策は?」 「なんとか漏れないようにはしてますが、東日だけはしつこいですね」 「東日? そういえば、1人いたね、しつこいのが」 「高見とかいう新聞記者ですか」 「そうそう、彼……」 「彼ならもう死んでますが」 「あっ、そうだったね。あ~~いう気骨のある記者が少なくなって来ただけに残念だね」 「そうですね」 「それで?」 「はい。北朝鮮との最終調整まで後3回ほどは渡朝するつもりですが、お話は例の原子力発電所の件なんですよ」 「あと3基は増やしたいって言ってるんだろう?」 「そうです」 「今、北朝鮮側が保有している核ミサイルが20基、核弾頭ミサイルが50発、転用可能ミサイルが200発……それに原発をあと3基はなあ。徐々に民主主義に体制を移行しつつあると言っても、独裁制である事にはまだ変わりないし……」
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