第13章 『野望』

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〔2〕 合田は執務室のデスクの一番上の引き出しから黒の電話のような物を取り出し、スイッチを捻(ひね)る。無線機のようだ。 「……あっ、私だ。どうだ?……そうか、接触はしたんだな……うん、うん……それで、白か?……まだ、ハッキリは分からないのか……時間があまりないぞ。 ……ふ~ん、札幌でそんな事があったのか。太田の感想は?……うん、うん、そうか……手段は選ばなくて良いから必ず回収してくれ。多少の犠牲は止むを得ないだろう……その点は大丈夫だ、私が全力を上げて揉み消す。 それから、東日の記者にしつこいのがいるらしいから、そっちの方もマークしてくれ。とにかく時間がないから急いでくれ、頼んだぞ」 無線機を元の場所に戻すと、デスクの上にあった葉巻を手に取り、先をカッターで切り取ってから火を点け、煙をくゆらせる。 「…(ここまで来たらもう後戻りは出来ないんだ……)」                                                                                                                  【東京都中央区銀座 東日新聞本社4階政治部】 「お~い、坂本 !!」 「なんすかっ、デスク?」 数多くあるデスクの中から端の方に座っていた20代後半の細身の男性が立ち上がる。 「なんすかっ、じゃねぇよ、バカ野郎 !! 産田重工業の記事どうなってんだよ?」 「高見さんの資料がまだ見つかってないんですよ」 「高見の資料なんぞ、当てにしないで自分の足でネタ探してこんかい」 「では、総理の定例会見の方は?」 「そんな話を聞くだけの記事なんて、新人……名前なんてたっけ?」 「堂本ですか」 「そう、堂本にでも任せておけ !!」
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