第13章 『野望』

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走行中、左手にインターチェンジを示す標識が見えた。 「…(あと200メートル。今日は、カメラマンも連れて来なかったし、近隣住民の取材に止めておくか)」 雨足は次第に激しくなって来ている。 「…(う~ん、この状態で取材は辛いかも~っ)」 程なくしてインターを出て、小田原・箱根方面に向かう。車載のデジタル時計は午前11時50分となっていた。 「…(もうすぐお昼かあ、どうりで腹が減るわけだ)」 一般道は思っていた以上に混雑していた。都内に比べれば信号機と信号機の間隔が広いものの、それでも信号待ちは苛立(いらだ)ちを覚えた。その上、雨である。 厚木を抜けた辺りから背景に高い山が現われ出す。対照的に建物は低くなり、木造の一戸建が多くなって行く。 「…(間もなく秦野か。その前に腹拵え、腹拵えと)」 駐車場を探すのに時間が掛かる市内は避け、駐車場のある一番最初に目についたラーメン屋に決める。 「いらっしゃい !!」 湯気が上がるカウンターの向こうから威勢の良い声がする。店内はお昼時でカウンターもテーブルもほぼ埋まっていた。 20歳くらいの女子の店員が坂本が1人である事を確認する。 「相席でも良いですか」 「うん」 店の真ん中ほどにあるテーブルに案内され、前の席で食べている人に軽く会釈をして椅子を引く。 ラーメンを注文し、椅子に座って何気なく見上げると、入り口の引き戸の上の所に小型のテレビが置いてあった。
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