第13章 『野望』

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〔3〕                      テレビではお昼のニュースが流されていた。 『……続いて、防衛費増加のニュースです。 政府は来年度の防衛費を現段階のGNP(国民総生産)比1.52%から2.16%に増加する事を決め、来年度の予算に盛り込むと発表いたしました。 この点について、杉山財務大臣は消費税の増加、並びに間接税を……』 「また、税金上げるのかよ?」 「あの合田ってのが総理になってから何か『きな臭く』なってないか」 「『きな臭い』って?」 「いやさ、いきなり北朝鮮と国交回復に、軍備増強だろう」 「でも、北朝鮮との国交回復の必要性は総理になる前から言ってたぞ」 「そうだとしても、韓国と北朝鮮がまだ国交回復もしてないのに……」 カウンターにいるサラリーマン風の客の会話を耳にしながら坂本も『成る程』と思う。  「…(高見さんも言ってたなあ……… 『いいか、坂本、政府の暴走を止められるのは、国会議員でも国民でもないんだ。それは俺達、マスコミ関係者なんだよ。そのためには徹底した取材、裏取りが必要なんだ。忘れるな』 ………あの時は、そんなものかと思って聞いてたけど、今なら分かるような気がする)」 「お待ちどおさま~~っ !!」 そして、運ばれて来たラーメンを食(しょく)する前に高見の言葉の意味を改めて噛み締め、決意を新たにする。 「…(良し、帰りに横浜支社でも寄るか)」                   店を出ると雨はまだ降っていた。駆け足で車に戻り携帯をチエックする。
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