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『高見の遺品を整理したけど、それらしき物はなかったと思います』
「そうですか。あの~っ、貸し金庫の鍵などは預かってないですよね?」
『預かってません』
「高見さんの友人に預けたとは考えられませんか」
『そうねぇ……でも、それならお通夜とか告別式に持って来ても良さそうなものだと思いますけど……』
「そう言われれば確かにそうですね……あの~~っ、高見さんの友人にその辺の事を聞いてみたいんですけど、よろしければお友達を紹介して頂けませんか」
『そうねぇ、ちょっと待ってて……』
「…(堂本の奴、ちゃんと取材してっかな……まあ、分からなけりゃ、記者クラブに行けば、東日関係者がいっぱいいるから何とかなるだろう……)」
そんな心配をしているところに高見の妻、麻衣子の声が再び聞こえて来る。坂本は手帳を取り出し、メモの準備をする。
『お待たせしました。良いかしら……まずは、紺野卓司さん。彼が高見とは一番仲が良かったわ。電話番号はね……』
「……はい、分かりました。何をやっている人なんですか」
『元弁護士で、今は私立探偵をやってるわ』
「元弁護士で、私立探偵? 変わった経歴をお持ちなんですね。はい、それから、北川和臣さん……はい、えっ、この人も弁護士?……そして最後は、大月誠さん……外務省なんですか。う~~ん、見事というか、天晴(あっぱ)れというか……はい、はい……どうもありがとうございました。近いうちに連絡取ってみます……はい、では失礼します」
メモった名前と電話番号をチェックする。
「…(なんだこの友達は、みんな一筋縄[ひとすじなわ]じゃ行かない人ばかりじゃないか……俺なんか相手にしてくれるんだろうか。特に、外務省の大月さん……電話するのが恐くなっちゃったよ)」
手帳と携帯をワイシャツの胸ポケットにしまい、フロントガラスの内側を右手で拭いて曇りを取り払って空を覗き込む。
「…(まだ雨足は強い。もしかしたら、前途多難の予兆?)」
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