第2章 『記憶』

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外出できなかった事が幸いした訳ではなかったが、1日中、高見の事件についての情報を集める事はできた。そして、午前2時、マンションの扉が開く。 「ただ今~っ……やっぱり部屋に電気が点いてて誰かが待っててくれるというのはホッとするわ~っ…結婚しよっかな」 少し酔っているようだったが、商売柄、仕方がない事なのだろう。 「お帰り~っ !! 沙也加ちゃん、電話代払ってくれた?」 「ばっちり。すぐに使う?」 「うん」 緋色のセカンドバックから卓司の携帯を取り出すと、テーブルの前で胡座を掻いていた卓司にそのまま手渡す。 「……留守電が3件、メールは5件か……」 電話は全て昨日付け、どうやら使用停止にはなっていなかったようであった。 『……大月だ。高見が死んだぞ。葬式の事もあるから至急連絡してくれ』 『……俺だ、北川だ。もう知っていると思うが……しっかし、お前はいつも連絡が取れないな』 『……卓司、母さんよ。高見君、死んだんだって。もう知ってるよね? たまには家にも連絡をよこしなさい』 「…(母さんまで入っている……)」 「ねぇ、ご飯食べた?」 「うん、さっき……」 「で、体の方は?」 「ありがとう、随分楽になったよ。あと、2,3日もあれば復活かな」 「それは良かったね。じゃ、あたしは着替えて焼そばでも作ろっかな」 沙也加はバッグをベッドの側にある化粧台に置くと、流しの左側にある洗面所へと向かった。 「メールはと……あれっ、高見から来てるじゃないか。日付は 7月15日……」
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