第3章 『疑惑』

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「お金を貯めて何かやりたい事でもあるの?」 「海外旅行にでも行って、その後は小さなお店でも持とうかなんて、ね」 「素敵な夢じゃないか」 「タッキー、結婚は?」 ここで、いきなり話を切り替えられてしまう。どうも自分の事を余り話したくないようであった。 「俺はまだ独身だよ」 「ふ~ん、まだひとりなんだ」 「そう言う沙也加ちゃんは彼氏とかいるの?」 「いたけど、ついこの間別れた」 「そう、それは残念だったね」 「いいんだ、あんな優柔不断な男」 「どういう意味?」 「妻子持ちの男だったの。別れる、別れる、って言っていて全然別れないからこっちから別れてやった」 「あはははっ、色々複雑なんだ」 「タッキーはどうして私立探偵になったの?」 質問に脈絡はなかったが、主導権は完全に握られてしまった。 「う~ん、前の仕事に嫌気がさした、かな !?」 「前の仕事って?」 「弁護士……」 「え~っ、弁護士だったの。もったいないじゃない」 「全然……」 「でも、どうして辞めたの? 依頼人と肉体関係を持ったとか……」 「…(えっ !?)……いや」 「ねえ、どうしてよ、教えてよ」 これについては本当は話したくなかった。が、病み上がりで気弱になっていたせいか、口が勝手に動き出してしまう。 「実は、被告人が裁判前に首吊り自殺をしてね」 「被告人って刑事被告人の事?」 「…(あれっ !?)……そうだよ。俺が担当していた事件の被告人が看守の目を盗んで、拘置所で首吊り自殺をしたんだ」
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