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「お金を貯めて何かやりたい事でもあるの?」
「海外旅行にでも行って、その後は小さなお店でも持とうかなんて、ね」
「素敵な夢じゃないか」
「タッキー、結婚は?」
ここで、いきなり話を切り替えられてしまう。どうも自分の事を余り話したくないようであった。
「俺はまだ独身だよ」
「ふ~ん、まだひとりなんだ」
「そう言う沙也加ちゃんは彼氏とかいるの?」
「いたけど、ついこの間別れた」
「そう、それは残念だったね」
「いいんだ、あんな優柔不断な男」
「どういう意味?」
「妻子持ちの男だったの。別れる、別れる、って言っていて全然別れないからこっちから別れてやった」
「あはははっ、色々複雑なんだ」
「タッキーはどうして私立探偵になったの?」
質問に脈絡はなかったが、主導権は完全に握られてしまった。
「う~ん、前の仕事に嫌気がさした、かな !?」
「前の仕事って?」
「弁護士……」
「え~っ、弁護士だったの。もったいないじゃない」
「全然……」
「でも、どうして辞めたの? 依頼人と肉体関係を持ったとか……」
「…(えっ !?)……いや」
「ねえ、どうしてよ、教えてよ」
これについては本当は話したくなかった。が、病み上がりで気弱になっていたせいか、口が勝手に動き出してしまう。
「実は、被告人が裁判前に首吊り自殺をしてね」
「被告人って刑事被告人の事?」
「…(あれっ !?)……そうだよ。俺が担当していた事件の被告人が看守の目を盗んで、拘置所で首吊り自殺をしたんだ」
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