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携帯の着信音で目が覚める。
「…(ふわあ~っ。いつの間にか寝ちゃったよ……沙也加ちゃんは?)……えっ !?」
何と沙也加はジャージ姿のまま卓司の横で寝ているではないか。
「…(そうか、それで窮屈だったのか)」
沙也加を起こさないよう静かにベッドから抜け出てテーブル上の携帯を取る。待受画面の時計は10時20分を示していた。
「…(北川だ)……はい、お早ようさん」
携帯を耳に当て、そのままテーブル前に腰を下ろして胡座を掻く。
『やっと出たか、どこ行ってんだよ、この大変な時に?』
「北海道……」
『良いご身分だな』
「仕事だよ」
『高見の事は知ってるんだろう?』
「あ~っ、驚いたよ。どうなってるんだ?」
『こっちが聞きたいくらいだよ。それで、明日が通夜で、明後日が告別式だから。場所は……』
「あっ、それ無理なんだ」
『何で?』
「ちょっと怪我しちゃってさ。あと4、5日は動けない」
「……う~~ん、タッキー、電話?」
起こさないように小声で話しているつもりだったが、沙也加が目を覚ましてしまった。
『しーーっ !!』
慌てて沙也加に声を出さないよう注意するが、北川の耳にはシッカリ届いてしまったようである。
『成る程、それじゃ動けないわな』
「バカッ、勘違いするな」
『いいって、いいって。みんなには巧く言っておいてやるから。貸しひとつな』
「だから、違うって言ってるだろう」
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