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『分かった、分かった。それより、高見の所へは顔出せよ』
「おう」
状況が状況であるだけにこれ以上言っても無駄なような気がして諦める。
『それと、警察がお前の所在が掴めないって探してるぞ』
「事情聴取ってとこか?」
事件、事故の両面から捜査しているのであるから、友人である自分に警察が話を聞きに来るのは当然のように思われた。
『そんなとこだな』
「お前のとこにも来た?」
『ああっ……』
「何、聞かれた?」
『まっ、ありきたりの事だよ』
「そうか。ところでさ、お前、『T・S・エリオット』って知ってる?」
『T・S・エリオット !?……確か、イギリスの詩人かなんかじゃなかったか。それがどうかしたか』
「高見が死ぬ3日前に送って来たメールに出て来るんだけど、その中にある文面が全くの意味不明なんだよ」
『ふ~~ん。今度見せてくれよ』
「メールで送ろうかって、お前のメルアド知らないわ」
『東京に戻ってからで良い。とにかく、連絡くれよ』
「分かった」
電話を切ってテーブルの上に置く。さて、顔でも洗おうかと立ち上がろうとするとベッドから沙也加の声。
「お友達 !?」
沙也加は横になったまま卓司の方に顔を向けている。
「うん、俺の同業者。高見の葬式の件でね」
「私立探偵なの?」
「あっ、かつての同業者か」
「弁護士なんだ」
「そんな事より沙也加ちゃん、いつベッドに寝たの?」
「タッキーが寝てから……」
「変な事しなかっただろうな?」
「あーーっ、それはこっちのセリフ !!」
沙也加は上半身を起こし、真っ赤になって怒る。
「…(可愛い子だよな。俺もあれ以来、恋なんてしてないし……)……沙也加ちゃん、体調も良くなったようだし、今日から俺は下で寝るよ」
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