第4章 『事実』

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〔1〕          「お帰り~っ。すぐ分かったあ?」 「うん。歩いて5分ぐらいの所にあるんだね、コンビニ」 ドアを開けて出迎えてくれた沙也加はピンクのTシャツに茶色と紺のチェック柄のスカートという軽装に着替えていた。 「あっ、可愛い。俺、こっちの沙也加ちゃんの方が好きかも」 「自称、中年殺し……」 「あはははっ、中年殺しか」 自分では意識しなかったが、沙也加くらいの年齢からは自分も中年の範疇に入るのかと苦笑いを浮かべ、コンビニのレジ袋を持ったまま部屋に上がる。そして、レジ袋をテーブルの上に置いて1リットル入りの牛乳パックを取り出す。 「はいっ、牛乳……ついでにアイスクリームも買って来たよ」 「ありがとう」 牛乳とアイスクリームを受け取った沙也加はそれらを流し台脇の白い大きな冷蔵庫にしまい込む。 「ところでさ、俺、5日間も風呂入ってないんだよね」 「そういう計算になりま~~す」 「悪いんだけど、朝食前にシャワー浴びさせてよ」 「OK。バスタオル出すね。下着は?」 「うん、買って来た」 沙也加からバスタオルを受け取り、玄関脇にある浴室に入って5日振りに体を清める。 「……あ~ ~っ、さっぱりした」 すっかりリフレッシュし、濡れた髪をバスタオルで拭きながら浴室から出て来ると、沙也加はテーブル前に座って新聞を読んでいるところであった。 「あっ、髭剃ったんだ。タッキー、なかなかハンサムじゃん」 「自称、キャバ嬢殺し……」 「きゃはははっ、私も殺されちゃうんだ。あっ、そうだ、さっき電話あったよ。出ようかどうか迷ったけど……それとね、新聞にタッキーの事、書かれているみたい」 「えっ !?」
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