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卓司はその言葉に驚き、直ぐ様、腰を屈めて新聞を覗き込み、沙也加が指差すところを読む。
『……尚、横浜中央署は高見昌也さん(35)の友人で現在所在が確認出来ていない人物を参考人として探している模様……』
「この参考人ってタッキーの事だよね?」
顔を上げ、心配そうに卓司を見つめる沙也加。
「多分……」
「警察に捕まるとどうなるの?」
「任意だから捕まらないよ。一応、話を聞かれるだけ……」
「でも、参考人って?」
「それは高見が死んだ後、俺が行方不明になっているから怪しいと思っているだけで……」
「でも、警察には行くんでしょ?」
「うん。だけど最初は横浜は行かないよ」
「どうして?」
卓司の意味不明な言葉に沙也加は首を傾げる。
「だって俺、事件当日のアリバイ無いし……このまま横浜に行って『札幌に行ってました』って言ったって説得力ないだろう?」
「でも、飛行機の搭乗記録調べれば分かるんじゃないの?」
「行きはね」
「帰りも同じでしょ?」
「若干違うんだ。時間を掛け過ぎるのはアリバイ工作の為と勘ぐられ易くなる。わざわざ飛行機の搭乗記録を残したってね。それよりも、こっちの警察に出頭した方が警察の受ける心証が良いんだよ」
「ふう~~ん、さすがは元弁護士。じゃ、これから出掛けるの?」
「うん、午後にでも早速行こうかと思ってる」
「そう。私も、今日は同伴出勤だから、もう少ししたら出るよ」
「分かった。それじゃあ、そろそろ朝ご飯にしようか」
「うん」
テーブルの上には卓司がシャワーを浴びている間に準備したらしく、トーストにハムエッグ、サラダとアイスコーヒーが乗っていた。
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