第4章 『事実』

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「襲われた際、負傷してしまいまして、今すぐには動けないのと、少しこちらで調べたい事がありまして、このまま出頭して身柄を拘束される事だけは絶対避けたいのです」 「それで?」 「この事を私が直接、中央署に電話して話しても良いのですが、私が言っても信憑性に欠けると思うのです。そこで、こちらから私に替わって事情を説明して頂きたいと思いまして……」 「成る程。自分は事件に関係していて逃げ回っている訳ではないと、間接的に証明して欲しいという事ですか」 「端的に言えばそういうことになります」 「う~~ん、ちょっと待っていて下さい。今、署長に話してみますので……」 近藤という警察官はそう言うと、そのまま一階奥にある署長室に入って行った。 「…(少し無理な注文だったか)」                                                                                                                      待つ事、10分。近藤が署長室のドアを開け、姿を見せたかと思ったら卓司に向かって手招きをしている。それを見た卓司はカウンター脇にある低い扉を開け、署長室へと向かう。 「…(話はまとまったのだろうか)」                                                                                 近藤の後に付いて署長室に入る。 役職に似つかわしい広い部屋。頭のハゲあがった恰幅(かっぷく)の良い50代後半の男が壁際にある大きなデスクに座っていた。 「どうぞどうぞ、中にお入り下さい。事情は近藤から伺いました。さあさあ、そこへお座り下さい」 卓司は部屋中央にある黒いソファに座るよう勧められる。
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